『ヤニねこ』の声優インタビューを追うと、キャラクターごとに笑いの作り方を変え、全員が真剣に日常を生きることでコメディを成立させていることが分かります。
公式サイトでは夏吉ゆうこさんから稲田徹さんまで主要キャスト8人のインタビューが公開されており、役作り、演技ディレクション、アフレコ現場の裏側まで具体的に語られています。
原作は、にゃんにゃんファクトリー先生が講談社「ヤングマガジン」で連載する同名漫画。
TVアニメは2026年7月2日からTOKYO MX・BS11で放送が始まり、AT-Xでは7月25日から放送されています。アニメーション制作はバイブリーアニメーションスタジオ、音響監督は濱野高年さんです。
タバコを最優先にダラダラ生きる獣人・ヤニねこを中心に、強烈すぎる住人たちの日常を描く本作。
しかし声優陣の話を横断してみると、「とにかくテンション高く演じれば面白い」という単純な作品ではありませんでした。
この記事では、「ヤニねこ 声優 インタビュー」で情報を探している人向けに、公式インタビュー8人分を公開日順に整理し、それぞれの役作りや注目発言、そこから見えるアニメ版ならではの演技設計まで解説します。
『ヤニねこ』声優インタビューは誰が公開されている?
『ヤニねこ』公式サイトでは、2026年6月5日のヤニねこ役・夏吉ゆうこさんを皮切りに、7月1日の大家役・稲田徹さんまで、主要キャスト8人の単独インタビューが順次公開されました。
まずは「誰のインタビューを読めば何が分かるの?」という人向けに、全体像を整理しておきます。
公開日 声優 役名 主な注目ポイント
2026年6月5日 夏吉ゆうこ ヤニねこ 実物のタバコを使った動作確認、息や音の作り込み
2026年6月9日 松岡美里 ヤクねこ 人間くさい内面、テンションを大胆に振り切る演技
2026年6月12日 船戸ゆり絵 ハメねこ 配信者を研究した役作り、激しい感情変化
2026年6月16日 清水彩香 カンサイねこ 「自分は面白い」と信じてスベる演技
2026年6月18日 本泉莉奈 妹子 「作品の良心」としての立ち位置、ツッコミの間
2026年6月23日 井澤詩織 アルねこ 吐く音など身体的な音のリアリティー
2026年6月26日 明智璃子 おちんぽ達郎 笑いを狙わず、真面目さの延長で奇妙さを作る芝居
2026年7月1日 稲田徹 大家 相手の芝居を受ける演技、掛け合いを生かす柔軟さ
こうして並べるだけでも、かなり面白い違いがあります。
ヤクねこは感情を振り切る。ハメねこは配信者としてのキャラクターを作る。カンサイねこは自分の笑いを疑わない。妹子は暴走する周囲に対する基準点になる。
一方で達郎や大家は、無理に笑いへ寄せるのではなく、むしろ真剣に反応することで周囲のおかしさを浮かび上がらせる役割を担っています。
私はこの8人をまとめて読んだことで、『ヤニねこ』のコメディが「全員でアクセルを踏みっぱなし」に見えて、実際にはアクセル・ブレーキ・ハンドルを別々のキャラクターへ割り振っている作品なのだと感じました。
全員アクセル担当だったら、たぶん第1話の途中で視聴者の脳が渋滞します。
夏吉ゆうこ・松岡美里・船戸ゆり絵・清水彩香はどんな役作りをした?
前半4人の声優インタビューでは、キャラクターのテンションや身体感覚をどう声へ変換するかという話が目立ちます。
同じ「にぎやかなキャラクター」でも、アプローチは驚くほど違っています。
夏吉ゆうこはヤニねこの「吸う動作」まで確認
ヤニねこ役・夏吉ゆうこさんの公式インタビューは2026年6月5日に公開されました。
夏吉さんは出演決定前からXで原作漫画を読んでおり、とんでもない登場人物ばかりなのに、それぞれに愛嬌があって思わず読み進めてしまう作品だと感じていたそうです。
ヤニねこの魅力として挙げているのが、タバコ以外への執着が薄く、ひどい目に遭っても引きずり続けないところ。
それでも妹子には姉らしい態度を取ろうとする瞬間があり、生活能力は壊滅的なのに完全には憎みきれない。その絶妙なラインがヤニねこのキャラクターを支えています。
そして役作りで特に興味深いのが、実際にタバコを購入したというエピソードです。
夏吉さん自身は喫煙者ではありませんが、名前の印象から「わかば」を選び、第1話収録日にスタジオへ持参。火はつけず、喫煙シーンで口にした際の感覚を確かめました。
ただ、収録中に持ち続けると崩れてしまうため、その後は口だけで音を表現する方法へ移行したと説明しています。
ここで重要なのは、喫煙そのものを体験したという話ではありません。
目に見える動きを一度身体で確認し、それを最終的に「音だけの芝居」へ翻訳したところが役作りとして面白いのです。
アニメの音響では、画面に描かれた動作すべてに説明台詞があるわけではありません。
吸う、吐く、むせる、口に物を含む。
こうした小さな身体感覚を声や息で補うことで、キャラクターが画面の中で本当にそこにいるような感覚が生まれます。
夏吉さんについては、清水彩香さんや明智璃子さんのインタビューからも、細かな音を何度も試していたことが語られています。
これはもはや「ヤニねこの声」というより、ヤニねこという生き物の効果音担当まで兼任している勢いです。
松岡美里はヤクねこの情緒を大胆に振り切る
ヤクねこ役・松岡美里さんの公式インタビューは2026年6月9日に公開されました。
松岡さんは原作を読んだ際、かなりアウトローな内容に驚きながらも、これまでにない種類の刺激を感じ、一気に読み進めたと振り返っています。
特に注目したいのが、ヤクねこを単なる危ないキャラクターとして見ていない点です。
松岡さんは、ヤクねこは非常に真面目な人物だからこそ過去を引きずり、悩み続けているのではないかと分析。
ヤニねこ、大家、ハメねこなど、話す相手によって会話の空気が異なることにも、人間関係のリアルさを感じていると説明しています。
事前準備では、タバコを吸う人たちへ実際に話を聞き、作中人物たちが感じていることを理解しようとしたそうです。
そして制作陣からの演技ディレクションで印象に残ったのが、場面によっては前後の文脈にとらわれすぎず、テンションを大きく振り切ることでした。
これはヤクねこの演技を理解するうえでかなり重要です。
通常の会話劇では、感情Aから感情Bへ自然につながることが求められる場面も多いでしょう。
ところが『ヤニねこ』では、感情のハンドルが突然90度どころか270度くらい回る。
その急激な高低差自体を笑いへ変えるため、ヤクねこには「自然な感情移動」だけではない芝居が必要になるのだと考えられます。
船戸ゆり絵はハメねこのために配信者を研究
ハメねこ役・船戸ゆり絵さんのインタビューは2026年6月12日に公開されました。
船戸さんは『ヤニねこ』について、カオスな世界なのに不思議と温かさがあり、収録現場でもキャストが「もっと面白くするにはどうするか」を考えながら演じていると説明しています。
ハメねこの魅力は、何といっても感情の変化の激しさ。
自信満々だったかと思えば突然追い詰められ、そこからさらにリミッターが外れたような表情になるなど、船戸さんはジェットコースターのようなキャラクターだと捉えています。
役作りでは、ハメねこが配信者であることから、ジャンルを問わず複数の配信者の動画や配信を見て研究。
配信中のハメねこには普段以上に作ったキャラクター性があるため、そこへさらに強いディレクションを加えながら収録したと語っています。
ここはアニメを見るうえでも注目したい部分です。
ハメねこは「ハメねこ本人」と「配信画面の向こうに見せているハメねこ」が完全には同じではありません。
つまり船戸さんは、一人のキャラクターの中でさらに“演じている人物”まで演じなければならない。
声の高さ、語尾、テンポ、リアクションの大きさが変わることで、「今は配信者モードなんだな」と視聴者へ伝わるわけです。
これは現代の配信文化を扱うキャラクターならではの役作りと言えるでしょう。
また、とあるバンジージャンプの場面では音響監督・濱野高年さんと細かく相談しながら収録したことも明かしています。
勢い任せに聞こえる絶叫ほど、裏でめちゃくちゃ打ち合わせしている。
コメディとは恐ろしい世界です。
清水彩香は「スベる」のではなく本気でウケに行く
カンサイねこ役・清水彩香さんのインタビューは2026年6月16日に公開。
出演決定の連絡を受けたのがクリスマスだったため、清水さんはプレゼントをもらったような気持ちだったと振り返っています。
カンサイねこは、周囲と比べると一瞬まともに見えるものの、よく見ると全然まともではないキャラクター。
酒を飲むと面倒になり、心が折れれば泣き、大学では別の顔を見せる一方、なんだかんだ他人の面倒も見る。
清水さんは、そんな矛盾を含んだ人間くささに魅力を感じています。
演技の芯になったのは、制作側から示された「カンサイ自身は自分を面白いと思っている」という考え方です。
そのため、清水さんは最初から「このギャグはスベる」と理解して演じるのではなく、本人は成功すると信じて全力で前へ出るよう意識したと説明しています。

ここにはコメディ演技の重要なポイントがあります。
演者自身が「今から寒いことを言いますよ」と客席へ知らせてしまえば、キャラクターではなく演者の照れが見えてしまいます。
ところが本人が100%成功を確信して飛び込んだのに、周囲が静まり返る。
その本人の自信と周囲の反応の落差こそ、カンサイねこの笑いです。
さらに清水さんは、夏吉さんが細かな音を何度も試し直す姿を印象的な出来事として挙げています。
カンサイねこ自身にも歌う場面があり、音程を保つため複数回収録した結果、しばらく頭から歌が離れなかったそうです。
セリフ、歌、息、擬音。
『ヤニねこ』、耳だけで拾っても情報量がだいぶおかしいです。
本泉莉奈・井澤詩織・明智璃子・稲田徹は何を語った?
後半4人のインタビューから見えてくるのは、前へ出る演技だけではありません。
周囲の暴走を成立させる「受け」「リアクション」「基準点」の演技も、同じくらい重要だと分かります。
本泉莉奈が演じる妹子は「作品の良心」
妹子役・本泉莉奈さんの公式インタビューは2026年6月18日に公開されました。
本泉さんは、しっかりしたコメディ作品で主要キャラクターを演じることへの期待と同時に、『ヤニねこ』をどこまでアニメーションで表現するのかという意味でも制作陣の挑戦を感じていたと語っています。
妹子はヤニねこの妹ですが、姉とは対照的に真面目なしっかり者。
姉にかなり辛辣な言葉を投げることはあるものの、実際にはいつも気に掛け、面倒を見てしまう健気さがあります。
そして第1話収録時、本泉さんが制作陣から伝えられたのが、妹子はこの作品における「良心」だという方向性でした。
この一言は、『ヤニねこ』のコメディ構造を考えるうえで非常に大きな意味を持っています。
周囲が全員おかしなことをしている時、視聴者の感覚に近い人物がいなければ、「何がおかしいのか」という基準そのものが消えてしまいます。
妹子が普通の感覚で驚き、あきれ、ツッコむ。
その反応があるからこそ、ヤニねこたちの異常さがくっきり見えるわけです。
本泉さん自身も妹子を演じるようになってから、ツッコミについて考える時間が増えたと説明。
間の取り方や声色だけでもニュアンスが変化するため、面白さと同時に難しさも感じているそうです。
筆者としては、ここが今回の8人分の声優インタビューを読む中で特に重要な発見でした。
笑いを生むのはボケ役だけではない。ツッコミ役が「世界の正常値」を示すことで、ボケの破壊力が決まる。
妹子は派手に暴走するタイプではありませんが、『ヤニねこ』という作品の温度計として欠かせない存在なのでしょう。
井澤詩織はアルねこの「音」をリアルに作る
アルねこ役・井澤詩織さんのインタビューは2026年6月23日に公開。
井澤さんは原作を以前から知っており、オーディション時にアニメ化を知った一方、アルねこは役作りに迷ったキャラクターでもあったため、決定時には意外さも感じたそうです。
井澤さん自身は体質的に酒を飲めないものの、アルねこについては基本的に機嫌がよく、楽しそうに過ごしているところを魅力として挙げています。
そしてアフレコでは、かなり『ヤニねこ』らしい方向の細かい演技指示も。
吐き気を表現する音について、より液体感が伝わる方向のディレクションがあり、テスト時より本番で大胆に表現したと語っています。
なかなか声優インタビューで「音の水分量」について考えさせられることはありません。
しかし、ここにも音響演技の専門性があります。
同じ「うっ」と苦しそうに声を出す演技でも、喉だけの音なのか、息が絡むのか、口の中に何かあるような音なのかで、視聴者が想像する身体状態は変わります。
井澤さんも、ギャグほど真剣に取り組まなければ難しいという趣旨で現場について語っており、共演者の試行錯誤も刺激になっているとしています。
下品な音だから雑に作るのではなく、下品な音だからこそ妙にリアルに作る。
この無駄に高い技術力、私はかなり好きです。
明智璃子は達郎で「笑わせない」演技を選ぶ
おちんぽ達郎役・明智璃子さんの公式インタビューは2026年6月26日に公開されました。
オーディションでは複数役を受けており、中でも達郎は挑戦的な役だったため、合格を知った時はかなり驚いたそうです。
マネージャーからキャラクター名を書いた掛け軸とともに結果を知らされ、思わず膝から崩れ落ちる姿まで動画に残っていたという、役決定からすでに濃すぎるエピソードも明かしています。
しかし、芝居そのものは「濃くすればいい」という方向とは正反対です。
明智さんによると、制作側から求められた重要なポイントは、達郎本人が笑いを狙わないこと。
漫画家として仕事に真面目に向き合った結果、そのプロ意識が行き過ぎ、周囲から見ると奇妙な人物になっている。
最初から「変な人を演じる」のではなく、本人の中では正常な行動として成立させることを大切にしたと説明しています。
これはコメディの演技論でいう「デッドパン」に近い効果を生みます。
デッドパンとは、笑いを取ろうと顔を作ったり大げさに知らせたりせず、真顔のまま奇妙な状況を成立させる表現です。
達郎本人に「私、今めちゃくちゃ面白いでしょ」という意識がないほど、視聴者側には違和感が膨らむ。
カンサイねこと真逆ですね。
カンサイねこは「面白いと信じているからスベる」。
達郎は「面白いことをしている意識がないから面白い」。
同じ作品のボケでも、笑いが発生する仕組みがまるで違うのです。
明智さんは作品全体についても、分かりやすくコメディへ寄せるだけではなく、生々しいリアクションやリアリティーを求められることが多いと感じたと語っています。
ここは『ヤニねこ』のアニメ版を理解する重要な証言でしょう。
稲田徹は大家を「相手に振り回される側」として演じる
大家役・稲田徹さんの公式インタビューは2026年7月1日に公開されました。
稲田さんはオーディションの時点から第1話冒頭の場面を演じており、自分が演じる以上は妥協せず面白い表現をしたいという気持ちで臨んでいたと説明しています。
大家については、住人へ厳しく接することがあっても最終的には許してしまう懐の深さを評価。
作品そのものについても、単に刺激が強いだけではなく、日常から突然非日常へ放り込まれる緩急や、キャラクターへの愛おしさがあると捉えています。
役作りで興味深いのは、稲田さんが特別な準備をせず、相手の芝居に振り回されること自体が大家なのではないかと考えている点です。
この発想は、大家という人物のポジションにぴったりです。
ヤニねこたちが予測不能な方向へ飛んでいく中、大家まで先回りして大げさな芝居を作ってしまえば、掛け合いの自然さが失われます。
相手から来た球を受け、それに反応する。
言ってしまえば「受けの芝居」なのですが、これがあることで暴走する側の演技がより際立ちます。
実際、ヤクねこと大家の会話では、稲田さんが松岡美里さんのセリフ途中に自身のセリフを入れてしまったものの、松岡さんがその声を受けて残りのセリフを続け、芝居として成立したためOKテイクになった場面もあったそうです。

台本に書かれたセリフを一人ずつ正確に読むだけでは生まれない、相手の声を聞いて瞬間的に返す会話劇が残された例です。
ギャグアニメというと声量や奇声が注目されがちですが、こうしたキャッチボールの精度こそ、笑いのテンポを支える土台なのでしょう。
『ヤニねこ』声優インタビューから分かる演技設計とは?
主要8人のインタビューを整理すると、『ヤニねこ』の演技は大きく分けて「身体のリアル」「テンションの振幅」「キャラクター内の自己認識」「周囲を受ける基準点」の4つで設計されていると筆者は考えます。
まず身体のリアル。
夏吉ゆうこさんは喫煙動作を確かめ、井澤詩織さんは身体状態が伝わる音を細かく作る。
画面には絵があるのに、耳から入る情報だけでも身体を想像できるようにしているわけです。
次にテンションの振幅。
松岡美里さん演じるヤクねこは感情を大胆に振り切り、船戸ゆり絵さん演じるハメねこは配信者モードも含めて表情やテンションが激しく変化します。
そして自己認識。
清水彩香さん演じるカンサイねこは「自分は面白い」と信じて前進し、明智璃子さん演じる達郎は逆に「笑わせている」という意識を極力持たず真面目に行動する。
最後が基準点です。
本泉莉奈さん演じる妹子が常識側からツッコミを入れ、稲田徹さん演じる大家が住人たちの行動を受け止める。
この二人が画面内の温度を調整することで、ほかのキャラクターがどれだけおかしいのかを視聴者が判断できます。
コメディは、全員が面白いことを言い続ければ面白くなるわけではありません。
たとえば大きな声で叫ぶ人物の隣に、もっと大きな声で叫ぶ人物、その隣にも叫ぶ人物、その後ろにも叫ぶ人物がいたら、数分後にはただの騒音になってしまいます。
重要なのは差です。
大声と小声。
暴走と冷静。
自信と無反応。
喜びと気まずさ。
作り込んだキャラクター声と、妙に生々しい普通の声。
『ヤニねこ』はキャラクターごとにその差を散らしているから、毎回違う種類の笑いを生み出せるのではないでしょうか。
特に本泉さんが語った妹子のポジションは、この構造を考えると非常に重要です。
妹子が常識的な反応を示せば示すほど、姉のヤニねこがおかしい。
大家が本気で住人に困れば困るほど、住人たちのおかしさが際立つ。
達郎が大真面目であればあるほど、その行動のおかしさに視聴者だけが気付く。
つまり『ヤニねこ』では、ボケそのものより「ボケをどう受けるか」まで含めて一つの笑いとして設計されていると考えられます。
声優インタビューを踏まえると『ヤニねこ』はどう見ると面白い?
ここからは筆者としての考察です。
『ヤニねこ』を見る際、私はセリフの内容だけでなく、「今、この人物だけが何を普通だと思っているのか」に注目すると、作品が一段面白くなると考えています。
カンサイねこなら、自分のギャグは成功すると思っている。
達郎なら、自分は漫画家として真面目に仕事をしている。
妹子なら、姉たちの異常な行動を本当に異常だと思っている。
大家なら、面倒な住人たちを本気で何とかしようとしている。
ヤクねこなら、その瞬間瞬間の感情を本人はかなり真剣に生きている。
このキャラクター本人の認識と、視聴者から見える光景のズレが笑いになります。
だから『ヤニねこ』では、「声優さんが面白そうな声を出している」というところだけを見るのは少しもったいない。
むしろ面白い場面ほど、「このキャラクター、本人は笑わせるつもりある?」と考えてみてください。
おそらく答えはキャラクターごとに違います。
さらに、音にもぜひ注目してほしいところ。
夏吉さんの細かな息や音、井澤さんの身体感覚を伴う音、船戸さんの配信者らしいモード変化、本泉さんのツッコミの間。
映像を追うだけでは流してしまいそうな要素ですが、キャストインタビューを知ったあとなら「あ、ここか」と耳が止まる瞬間があるはずです。
私は長年アニメを見てきましたが、ギャグ作品ほど、声優の芝居が「強ければ強いほどいい」と誤解されやすいジャンルはないと感じています。
実際には逆で、どこまで強くするか、どこで引くか、どこで普通に戻すかというコントロールの方が難しい。
『ヤニねこ』の8人のインタビューには、その違いがかなり明確に現れています。
たとえばヤクねこの「振り切る」という方針だけ抜き出せば、大きな演技が正解に見えます。
しかし同じ作品で、達郎には笑いを狙わない方向性が与えられ、妹子には良心としての役割が置かれ、大家は相手に振り回されることを重視している。
つまり制作側は「『ヤニねこ』らしい芝居」を一つの型に統一していません。
キャラクターごとに別の正解を用意している。
ここがアニメ版『ヤニねこ』の声優演技における最大の見どころだと私は考えます。
また、複数のキャストが収録現場の笑いや共演者から受ける刺激について語っている点も見逃せません。
船戸さんは役者同士でより面白い表現を考えていると説明し、本泉さんは共演者のアドリブから学ぶことが多いと話しています。稲田さんも女性キャスト陣が迷いなく芝居へ踏み込む姿勢へ敬意を示しています。
ここからは私見ですが、こうした現場では一人の挑戦が次の演者の基準を少し上げ、それがさらに別の芝居を引き出す循環が起きやすいのではないでしょうか。
夏吉さんが細かな音へこだわる。
それを見た共演者が「そこまでやっていいんだ」と感じる。
次の演者が別方向へ振り切る。
受ける側がそれに反応して掛け合いが変化する。
台本という設計図を守りながらも、収録現場でキャラクター同士が少しずつ生き物になっていく。
声優インタビューを読んだ後の『ヤニねこ』は、そんなアフレコブース内のキャッチボールまで想像しながら楽しめる作品になります。
『ヤニねこ』声優インタビューまとめ
『ヤニねこ』公式サイトでは、2026年6月5日の夏吉ゆうこさんから7月1日の稲田徹さんまで、主要キャスト8人の単独インタビューが公開されています。
内容を整理すると、役作りの方向性はかなり多彩です。
夏吉ゆうこさんは喫煙時の身体感覚を確認しながら、ヤニねこの息や細かな音まで作り込む。
松岡美里さんはヤクねこの人間くさい内面を捉えつつ、場面によってテンションを大胆に振り切る。
船戸ゆり絵さんは配信者を研究し、ハメねこの通常時と配信時のキャラクター性を表現。
清水彩香さんは、本人だけは本気で面白いと思っているカンサイねこの自信を芝居の軸にしました。
そして本泉莉奈さんは妹子を「作品の良心」として支え、ツッコミの間や声色を追求。
井澤詩織さんはアルねこの身体状態が伝わる細かな音へ向き合い、明智璃子さんは達郎を意図的に笑わせるのではなく、漫画家としての真面目さが行き過ぎた人物として演じています。
大家役・稲田徹さんは、相手に振り回されることを重視し、共演者との会話そのものから芝居を組み立てています。
この8人を一緒に見ることで浮かび上がるのは、『ヤニねこ』では「ギャグアニメだから全員が面白く演じる」のではなく、「キャラクター本人は本気で生きているのに、結果として視聴者には面白く見える」状況を作っているということです。
だから次に本編を見る時は、大声や刺激的な台詞だけでなく、息遣い、リアクション、ツッコミの間、声色の変化、キャラクター同士の温度差にも耳を澄ませてみてください。
「この人、なんでこんな芝居をしているんだろう?」と思った瞬間こそ、声優インタビューで語られた役作りが隠れているかもしれません。
表面はとんでもなくカオス。
でもそのカオスを成立させているのは、かなり冷静で細かな演技設計でした。
そう考えると『ヤニねこ』、見た目以上に恐ろしい作品です。
もちろん、いい意味で。
よくある質問
『ヤニねこ』公式の声優インタビューは誰が公開されている?
主要キャストでは、夏吉ゆうこさん、松岡美里さん、船戸ゆり絵さん、清水彩香さん、本泉莉奈さん、井澤詩織さん、明智璃子さん、稲田徹さんの8人の単独インタビューが公式サイトで公開されています。
それぞれヤニねこ、ヤクねこ、ハメねこ、カンサイねこ、妹子、アルねこ、おちんぽ達郎、大家を担当しています。
『ヤニねこ』声優インタビューで特に分かることは?
役作りだけでなく、キャラクターごとに異なる演技ディレクションが設定されていることが分かります。
ヤクねこはテンションを振り切る、カンサイねこは自分を面白いと信じる、妹子は作品の良心としてツッコむ、達郎は笑いを狙わず真面目に行動するなど、同じコメディでも笑いの作り方はそれぞれ異なります。
ヤニねこ役・夏吉ゆうこはどんな役作りをした?
夏吉ゆうこさんは第1話収録時、実際の動作感覚を確認するため「わかば」を購入してスタジオへ持参し、火をつけずに口にした状態で喫煙シーンの感覚を確かめたと公式インタビューで説明しています。
その後は口だけで音を表現するようになり、共演者からも細かな音へこだわる姿勢が語られています。
執筆:水無月 巡(アニメ愛好フリーライター)


