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『対ありでした。~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』とは?作品概要と注目ポイントを解説

華やかな名門お嬢さま学校を背景にアーケードコントローラーを前に向き合う深月綾と夜絵美緒 未分類

『対ありでした。』は、名門お嬢さま学校を舞台に、少女たちが対戦格闘ゲームへ本気で挑む学園青春作品です。

江島絵理さんの漫画を原作に、2023年には実写ドラマ化、2026年7月7日からはTVアニメが放送。深月綾と「白百合さま」こと夜絵美緒の出会いから、秘密の対戦、大会へと熱量を増していく物語が描かれます。

『対ありでした。~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』とは?

『対ありでした。~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』は、「お嬢さま学校」と「対戦格闘ゲーム」という一見正反対の世界を組み合わせた作品です。

原作は江島絵理さんによる漫画で、『月刊コミックフラッパー』にて2020年から連載されています。

物語の舞台となるのは、中高一貫の名門女子校「黒美女子学院」。

一般家庭から高等部へ入学した主人公・深月綾と、学院内で「白百合さま」と呼ばれるほど周囲の憧れを集める夜絵美緒を中心に物語が進んでいきます。

基本情報を整理すると、次の通りです。

項目 内容
作品名 『対ありでした。~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』
原作者 江島絵理
漫画連載 『月刊コミックフラッパー』で2020年から連載
単行本 MFコミックス フラッパーシリーズ/KADOKAWA
最新刊 第11巻・2026年7月22日発売
実写ドラマ Leminoで2023年5月19日から配信・全8話
TVアニメ 2026年7月7日から放送
アニメーション制作 ディオメディア

原作漫画は2026年7月22日に第11巻が発売。

カドコミでは2026年8月19日に第65話「力の差」が公開されており、2026年9月11日時点で次回更新は9月19日に予定されています。

つまり『対ありでした。』は、2026年のアニメ化によって突然登場した作品ではありません。

漫画、実写ドラマ、TVアニメと段階的にメディア展開を広げてきたタイトルなんですね。

そして、作品名に使われている「対あり」は「対戦ありがとうございました」の略。

オンライン対戦ゲームなどで、対戦を終えたプレイヤー同士が感謝を示すときに使われる言葉です。

そこへ「お嬢さまは格闘ゲームなんてしない」という、いかにも格式高そうな副題が組み合わされています。

このタイトルだけを見ると、「上品なお嬢さまたちが格ゲーをするギャップコメディかな?」と思う人も多いかもしれません。

僕も最初はそのイメージを持ちました。

ところが物語を追うほど、見えてくるのはもっと真っすぐな青春です。

勝ちたい。

強くなりたい。

大好きだったものへ、もう一度向き合いたい。

少女たちが対戦を通して自分自身の感情をむき出しにしていくことこそ、『対ありでした。』の芯だと僕は感じています。


『対ありでした。』のあらすじは?なぜお嬢さま学校で格ゲーを隠すの?

物語は、お嬢さまに憧れる深月綾が、学院の人気者「白百合さま」夜絵美緒の秘密――実は筋金入りの格ゲーマーだったこと――を知るところから始まります。

深月綾は一般家庭で育ちながら、華やかで気品あふれる「お嬢さま」に強い憧れを持っていました。

その夢へ近づくため、高等部から黒美女子学院へ入学します。

しかし、いざ飛び込んでみれば周囲は本物のお嬢さまたちばかり。

生活環境も会話も振る舞いも、自分がこれまで過ごしてきた世界とは違います。

そんな綾が見つけた憧れの存在が、同じ外部入学生でありながら「白百合さま」と呼ばれるほど慕われている夜絵美緒でした。

上品な立ち振る舞い。

周囲を惹きつける雰囲気。

綾から見れば、まさに自分が目指したかった理想のお嬢さまです。

ところがある日、綾は誰もいない教室で、そのイメージを一瞬でひっくり返す美緒の姿を目撃します。

彼女はアーケードコントローラーを前に、対戦格闘ゲームへ完全に没頭していたのです。

しかも、ちょっとゲームが好きという程度ではありません。

美緒は勝負そのものを愛し、強い相手との対戦を求め続ける、生粋の格ゲーマーでした。

さらに美緒は、綾の手に残った格闘ゲーム特有のタコから、彼女も経験者だと見抜きます。

実は綾も、小学生の頃から格ゲーをかなり遊び込んできたプレイヤーでした。

ただ、物語が始まった時点ではすでに格ゲーから離れています。

ここが大事です。

『対ありでした。』は、ゲームを知らない主人公が一から教わる初心者成長ものではありません。

一度は大好きだったものから離れた少女が、強烈な格ゲーマーとの出会いによって、失っていた熱を取り戻していく物語として始まるんです。

しかも、二人が通う黒美女子学院ではゲームが禁止されています。

寮生活にも厳しい規律があり、好きなときにゲーム機を広げて遊べる環境ではありません。

だからこそ、綾と美緒にとって一回の対戦がやたらと重い。

「今日はちょっと遊ぼう」では済みません。

見つかれば問題になると分かっていても、それでも今すぐ戦いたい。

TVアニメ第1話「格ゲーはもうやめる」で綾と美緒が出会い、第2話「対ありでした」で格ゲーを通した二人の関係が本格的に始動。

第3話「真夜中の対戦会」では、抜き打ちの持ち物検査まで行われる状況の中、それでも対戦を求める少女たちの姿が描かれていきます。

ここから存在感を増すのが、犬井夕一ノ瀬珠樹です。

一見すると学院の規律を守る側に見える人物まで、実は格ゲーへ熱を注いでいる。

この広がりが実に面白いんですよね。

単に「校則違反をして秘密でゲームをする」という話なら、設定のギャップだけで終わってしまいます。

ところが『対ありでした。』では、学校内での立場や性格が違う少女たちが、コントローラーを握った瞬間、全員が一人のプレイヤーとして同じ土俵に立つんです。

学院では先輩と後輩。

誰かにとっては憧れのお嬢さま。

誰かにとっては規律を守らせる相手。

けれど、ラウンドが始まれば関係ありません。

画面の中では、勝つか負けるかです。

僕はこの「日常で背負っている肩書を、対戦中だけ外せる」という構造が、本作をただのギャップコメディから青春作品へ押し上げていると考えています。

※画像はAIによるイメージ

そして物語が進むと、少女たちの世界は学校の中だけには収まりません。

大会や強豪プレイヤーとの出会いを通し、「友達同士で楽しく遊ぶ格ゲー」から「本気で勝ちたい格ゲー」へ意味が変化していきます。

作品をこれから観る人なら、まずはゲーム禁止のお嬢さま学校で、格ゲー経験者の少女たちが秘密の対戦を始める物語と押さえておけば十分です。

そこから予想以上に熱い勝負の世界へ踏み込んでいくのが、『対ありでした。』の醍醐味です。


深月綾・夜絵美緒など『対ありでした。』の主要キャラクターは?

中心となるのは深月綾と夜絵美緒ですが、犬井夕や一ノ瀬珠樹をはじめ、それぞれ異なる性格と勝負への価値観を持つプレイヤーが登場します。

主人公の深月綾をTVアニメで演じるのは長谷川育美さん。

綾は、お嬢さまに憧れて黒美女子学院へ入学した一般家庭出身の少女です。

重要なのは、彼女が格ゲー初心者ではないということ。

幼い頃から格闘ゲームに親しみ、手を見ただけで経験者だと気づかれるほど遊び込んでいました。

だから、美緒と出会った瞬間から眠っていた感覚が呼び起こされていきます。

この「昔取った杵柄」があるからこそ、綾と美緒の対戦には最初から独特の緊張感があります。

知識ゼロの主人公が先生役のキャラクターについていく構図ではなく、綾にも経験と意地がある。

僕はここがかなり好きです。

綾は美緒に格ゲーを教えてもらうだけの存在ではなく、自分の感覚を取り戻しながら対等なプレイヤーへ戻っていく人物だからです。

そしてもう一人の中心人物、夜絵美緒を演じるのは市ノ瀬加那さん。

学院では「白百合さま」と呼ばれるほど注目を集め、綾からも理想のお嬢さまとして憧れられています。

しかしゲームの前では、その優雅な印象が一変。

勝負に対する欲求が非常に強く、とにかく戦いたい。

強い相手と出会えば興奮し、目の前に経験者がいるなら対戦せずにはいられない。

そんな格ゲーマーとしての本性が、美緒最大の魅力です。

綾と美緒の関係が面白いのは、単純な「師匠と弟子」にならないこと。

美緒は強烈なプレイヤーですが、綾にも過去の経験とプレイヤーとしてのプライドがあります。

だから対戦するほど二人の感情がぶつかる。

会話よりも一試合のほうが相手のことを理解できる瞬間がある。

そんな関係性が描かれています。

さらに、千本木彩花さん演じる犬井夕、下地紫野さん演じる一ノ瀬珠樹が加わることで、物語の対戦環境は一気に広がっていきます。

特に珠樹は、普段の規律を重んじる印象と格ゲーをするときの姿との落差が印象的。

学校生活で見えている顔だけでは、その人が本当に何を好きなのか分からない。

『対ありでした。』は、その「隠された熱」を格ゲーによって表へ引っ張り出します。

TVアニメでは、藤宮亜里沙役を長縄まりあさん、一ノ瀬花役を花守ゆみりさんが担当。

さらに大会に関わる人物として、gekido役を檜山修之さん、禍腐餌悪霊役を阿座上洋平さん、星識役を八代拓さんが演じています。

格闘ゲーム大会の実況でも知られるアールさんがフランベルジュ役で出演しているのも、本作ならではのポイントでしょう。

アニメ作品に実際の格ゲーシーンと関わりの深い人物を起用することで、単に「それっぽい大会」を作るのではなく、競技の空気そのものへ近づけようとしている。

声優陣だけを見ても、アニメとリアルな格ゲー文化をつなごうとする作品の姿勢が感じられます。


漫画・実写ドラマ・TVアニメの『対ありでした。』は何が違う?

大きな違いは対戦に使われるゲームで、原作では架空作品「Iron Senpai」、実写ドラマでは『STREET FIGHTER V CHAMPION EDITION』、TVアニメでは『ストリートファイター6』が採用されています。

原作漫画では、作中に「Iron Senpai」という架空の2D対戦格闘ゲームが存在します。

綾たちが主に遊ぶのはシリーズ最新作「Iron Senpai4」、通称「π4」。

架空タイトルを使うことで、そのゲーム独自のキャラクターや攻略、プレイヤー文化を作品の中だけで自由に構築できるのが原作の強みです。

一方、2023年5月19日からLeminoで配信された実写ドラマ版では、『STREET FIGHTER V CHAMPION EDITION』が使われました。

ドラマは全8話。

深月綾役を茅島みずきさん、夜絵美緒役を田鍋梨々花さん、犬井夕役を池田朱那さん、一ノ瀬珠樹役を永瀬莉子さんが担当しています。

つまり『対ありでした。』は、実写化された段階ですでに、原作の架空ゲームを現実に存在する格闘ゲームへ置き換える方向へ踏み出していました。

そして2026年のTVアニメでは、その路線がさらに強くなります。

アニメでは『ストリートファイター6』を対戦描写へ取り込み、EVO Japanまで作品世界へ登場させているからです。

綾はキャミィ。

美緒はリュウ。

夕はケン。

珠樹はジュリ。

さらに藤宮亜里沙はガイル、一ノ瀬花はA.K.I.を使用するなど、登場人物と『ストリートファイター6』のキャラクターが具体的に結びついています。

劇中の大会ではEVO Japanが登場し、『GUILTY GEAR -STRIVE-』や『鉄拳8』といった別の格闘ゲームの競技風景も描かれています。

※画像はAIによるイメージ

これは単なる作品タイアップとして片づけるには、かなり重要な変更だと僕は思います。

なぜなら、実在するゲームを使えば、視聴者も画面の中で起きていることを現実の競技と重ねられるからです。

例えば、キャミィとリュウが画面上で向き合っている。

残り体力が少ない。

距離を詰めるのか、相手の行動を待つのか。

ゲームを知らない人なら、綾や美緒の表情、音、実況、観客の反応から緊張感を受け取れます。

一方、『ストリートファイター6』を遊んだことがある人なら、間合いや技、キャラクター性能まで含めて対戦を読むことができる。

つまりアニメ版は、同じ一試合を「初心者にはドラマとして、経験者には対戦として」見せられる構造になっているんです。

ここは映像化との相性がとてもいい。

アニメならプレイヤーの表情、ゲーム画面、手元、実況、観客を細かく切り替えながら、「今どれほど追い詰められているのか」を視覚と音で伝えられます。

原作漫画には漫画ならではの速度やコマの迫力がありますが、アニメではゲームの効果音や声、時間の流れそのものまで演出へ利用できる。

格ゲーという題材は、思っている以上にアニメーションとの相性がいいんですよね。

TVアニメの監督は井畑翔太さん。

シリーズ構成を渡航さん、キャラクターデザインを松本麻友子さん、音楽を橋口佳奈さんが担当し、アニメーション制作はディオメディアです。

さらに格闘ゲーム部分ではFAV gamingが収録協力として参加しています。

個人的には、この制作体制も見逃せません。

格闘ゲームを「キャラクター同士が仲良くなるための小道具」として扱うだけなら、ここまで現実側との接点を作る必要はありません。

実在ゲーム、大会、格ゲーシーンに関わる人々まで取り入れることで、少女たちが本当に一つの競技文化へ飛び込んでいく感覚を高めているのだと思います。


『対ありでした。』は何が面白い?格ゲー初心者でも楽しめる?

格ゲー初心者でも十分楽しめます。本作の中心にあるのは専門知識ではなく、「好きなものへ本気になる少女たち」の感情だからです。

最初に目を引くのは、もちろん「お嬢さま×格ゲー」というギャップでしょう。

優雅なお嬢さまたちが過ごす名門校。

そこに存在する、校内の憧れ「白百合さま」。

そんな美緒が誰もいない場所でアーケードコントローラーを握り、勝負に熱くなっている。

もう設定だけで強いんです。

ただ、数話追うと「お嬢さまなのに格ゲーをする」という面白さだけではないことが分かってきます。

美緒は、変わった趣味を持つお嬢さまではありません。

本当に格ゲーが好きな一人のプレイヤーとして描かれています。

強い人と戦いたい。

負けたくない。

もっと対戦したい。

研究したい。

勝てばうれしく、負ければ悔しい。

その感情に、お嬢さまらしい上品な建前はほとんど通用しません。

そして、その熱に引っ張られるのが綾です。

僕はこの「綾がもう一度格ゲーへ戻っていく」という軸こそ、ゲームに詳しくない人でも作品へ入りやすい最大の理由だと思っています。

誰にでも、昔すごく好きだったのに離れてしまったものが一つくらいあるかもしれません。

スポーツでもいい。

音楽でもいい。

ゲームでも、漫画でも、絵でもいい。

時間がなかった。

環境が変わった。

何となくやめてしまった。

理由はさまざまです。

ところが、誰かが心の底からそれを楽しんでいる姿を見ると、「ああ、自分も好きだったな」と気持ちが戻ってくる瞬間があります。

綾にとって、そのスイッチを押した人物が美緒でした。

だから『対ありでした。』の序盤は、ゲーム復帰ものとして見るとかなり感情移入しやすい。

美緒との対戦は、単なる勝負ではありません。

綾が自分の中にしまい込んでいた「好き」を掘り起こす行為でもあるんです。

さらに僕が面白いと思うのが、対戦内容そのものがキャラクター同士の会話になっていること。

対戦格闘ゲームは基本的に1対1です。

攻める。

守る。

待つ。

大胆に技を出す。

相手のミスを待つ。

追い詰められても前へ出る。

安全な選択肢を取る。

こうした判断には、その人の性格が驚くほど出ます。

普段は強気なのに、勝利目前になると慎重になる人もいる。

普段は冷静なのに、追い込まれた瞬間だけ思い切った行動を選ぶ人もいる。

口では平静を装っていても、プレイを見ると焦っていることが分かる場合もあります。

だから本作では、セリフだけ追うよりも「なぜ今、この行動を選んだのか」を見ると人物像がさらに立体的になります。

格ゲーの試合が、もう一つの会話シーンになっている。

これは対戦ゲームを題材にした作品ならではの強みでしょう。

そして初心者に優しいのは、すべての専門用語を理解しなくても人間ドラマ自体は追えるところです。

「相手に読まれた」。

「ここで勝負へ出た」。

「あと一回攻撃を受けたら危ない」。

その程度の状況さえ伝われば、勝負の緊張感は楽しめます。

反対に格ゲー経験者なら、使用キャラクターや間合い、選択肢、ゲーム特有の心理戦まで読むことができる。

知識がなくても入口があり、知識が増えるほど解像度が上がる。

この二段構えが、『対ありでした。』の大きな魅力です。


『対ありでした。』が描く「本気で遊ぶ青春」を考察

ここからは筆者としての考察ですが、僕は『対ありでした。』の本質を、「自分が本当に好きなものを、好きだと認められるか」という物語だと捉えています。

綾は物語の最初、お嬢さまになることを目指しています。

言い換えれば、「こういう自分になりたい」という理想像を外側に探している状態です。

その象徴が、学院で「白百合さま」と呼ばれる美緒でした。

立ち振る舞いが美しく、周囲から憧れられ、自分にはないものを持っている。

綾にとって、美緒は完成された理想のお嬢さまに見えます。

ところが、実際の美緒は違いました。

人目を盗んで格ゲーをする。

勝負となれば熱くなる。

強い相手がいれば戦いたがる。

綾が最初に憧れた「白百合さま」のイメージから考えれば、とんでもないギャップです。

でも、美緒はゲームをしているとき、本当に楽しそうなんですよね。

ここに本作の面白い反転があると僕は思います。

綾は最初、美緒のお嬢さまらしさに憧れます。

しかし物語が進むにつれ、綾を格ゲーへ引き戻していくのは、むしろ美緒の「周囲からどう見えるかなんて忘れるほど、好きなものへ夢中になれる姿」です。

つまり憧れの対象が、外見や振る舞いから「生き方」へ変わっていく。

これは青春作品としてかなり美しい構造ではないでしょうか。

そして第1話のタイトルが「格ゲーはもうやめる」なのも象徴的です。

一度やめたものへ、もう一度戻る。

これは単純に昔と同じ自分へ戻ることではありません。

離れていた時間を経験したうえで、それでも改めて「自分はこれが好きだ」と選び直すことです。

だから綾の格ゲー復帰には、初心者の成長とは別の重さがあります。

もう一つ、本作で重要なのが「遊び」と「本気」の関係です。

格ゲーはゲームです。

本来は遊ぶためのもの。

しかし真剣に取り組めば、勝敗に一喜一憂し、負けた原因を考え、練習し、もっと強くなりたくなります。

楽しいだけだったものが、本気になった瞬間に苦しくなることもある。

負ければ悔しい。

努力しても勝てない日がある。

それでも、また対戦したくなる。

僕はここに、スポーツものにも通じる青春の感情を感じます。

「遊びなのに本気」なのではなく、「遊びだからこそ本気になれる」。

『対ありでした。』は、その感覚を対戦格闘ゲームという題材で真正面から描いている作品だと思います。

さらに映像化の歴史を見ると、もう一つ興味深い特徴があります。

原作では架空ゲーム「Iron Senpai」。

2023年の実写版では『STREET FIGHTER V CHAMPION EDITION』。

2026年のTVアニメでは『ストリートファイター6』。

つまり『対ありでした。』は映像化されるたび、その時代に存在する現実の格ゲー文化へ近づいています。

僕はこれを、それぞれの映像版が「その時代の格ゲーシーンを記録するタイムスタンプ」のような役割も持っていると感じています。

数年後に実写ドラマを見返せば、『ストリートファイターV』を中心とした時期の空気がある。

2026年のアニメを見返せば、『ストリートファイター6』やEVO Japanと結びついた時代の競技シーンが感じられる。

単に原作を映像へ移すだけではなく、その時々のリアルなゲーム文化を作品の中へ保存している。

これは『対ありでした。』ならではの面白さではないでしょうか。

また、実在ゲームを採用したことで、作品と視聴者の距離も近くなっています。

綾や美緒が遊んでいるゲームを、自分でも触ることができる。

使用キャラクターについて調べることもできる。

大会について知ることもできる。

作品を観たあと、現実側へ一歩踏み出せるんです。

アニメの中に閉じた競技ではなく、その先に実際のコミュニティや大会文化が存在する。

これは競技を扱う作品としてかなり大きいと思います。

今後の物語で僕が注目したいのも、「誰が勝つか」だけではありません。

むしろ、勝つことや負けることによって、綾たちの「格ゲーが好き」という気持ちがどう変化するのかを見たい。

ただ楽しかった頃。

もっと強くなりたくなった頃。

負けることが苦しくなる頃。

それでも対戦したくなる頃。

同じゲームでも、自分の本気度が変われば見える景色は変わります。

そして『対ありでした。』というタイトルにも、その構造がよく表れています。

「対あり」は一試合の終わりに交わす言葉です。

でも格ゲーでは、一試合が終わったからといって気持ちまで終わるとは限りません。

負ければ、もう一度やりたくなる。

勝っても、もっと強い相手と戦いたくなる。

一つの対戦の終わりが、次の対戦の始まりになる。

僕には、綾たちの青春そのものがこの言葉に重なって見えます。


まとめ|『対ありでした。』はお嬢さま×格ゲーだけでは終わらない

『対ありでした。~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』は、江島絵理さんの漫画を原作とする、名門お嬢さま学校と対戦格闘ゲームを組み合わせた学園青春作品です。

主人公の深月綾は、お嬢さまに憧れて黒美女子学院へ入学。

そこで「白百合さま」と呼ばれる夜絵美緒が、実は極度の格ゲーマーだったことを知り、かつて離れていた格闘ゲームの世界へ再び足を踏み入れていきます。

しかも学院ではゲーム禁止。

そのため最初は、見つからないように行う秘密の対戦から始まります。

やがて犬井夕や一ノ瀬珠樹たちも加わり、少女たちの世界は学校内から本格的な大会へと広がっていきます。

作品は2020年から漫画連載が続き、2023年5月19日からLeminoで全8話の実写ドラマを配信。

2026年7月7日からは、長谷川育美さん、市ノ瀬加那さん、千本木彩花さん、下地紫野さんらが出演するTVアニメが放送されています。

映像化で特に興味深いのは、実写版で『STREET FIGHTER V CHAMPION EDITION』、TVアニメで『ストリートファイター6』を取り入れていること。

さらにアニメではEVO Japanなど現実の格ゲー文化と作品世界が接続され、少女たちの勝負に独特のリアリティが生まれています。

もちろん格ゲー経験は必須ではありません。

一度大好きだったものから離れてしまった綾が、美緒との出会いによって再び熱を取り戻していく。

その感情は、ゲームを知らなくても十分伝わります。

そこから格ゲーについて知れば、使用キャラクターやプレイスタイル、読み合いまでさらに深く楽しめる。

初心者には青春ドラマとして、経験者には格ゲー作品として別の入口が用意されているのが、本作の強さでしょう。

僕は『対ありでした。』を、単なる「お嬢さまが格ゲーをするギャップが面白い作品」だとは思っていません。

勝ちたいけれど、楽しくもありたい。

友達だけれど、負けたくない。

周囲に合わせたいけれど、本当に好きなものも捨てたくない。

そうした相反する感情を、1対1の対戦という逃げ場のない場所へ乗せるからこそ、少女たちの気持ちが鮮明に見えてきます。

「お嬢さまは格闘ゲームなんてしない」――その固定観念を豪快にひっくり返しながら、本気で遊び、本気で勝ち、本気で悔しがる少女たちを描く。それこそが『対ありでした。』最大の魅力です。


よくある質問

『対ありでした。~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』の原作者は誰?

原作者は江島絵理さんです。

『月刊コミックフラッパー』で2020年から連載され、MFコミックス フラッパーシリーズから単行本が刊行。2026年7月22日には第11巻が発売されています。

『対ありでした。』のTVアニメはいつから放送?

TVアニメ『対ありでした。~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』は、2026年7月7日から放送開始しました。

AT-X、TOKYO MX、MBS、BS日テレなどで放送されており、放送・配信日時は変更される場合があるため、視聴前には最新の公式情報を確認してください。

『対ありでした。』には実在する格闘ゲームが登場する?

はい。

2023年の実写ドラマでは『STREET FIGHTER V CHAMPION EDITION』、2026年のTVアニメでは『ストリートファイター6』が取り入れられています。

アニメでは綾がキャミィ、美緒がリュウ、夕がケン、珠樹がジュリを使用。

EVO Japanも劇中へ登場するなど、原作の架空格闘ゲームをそのまま映像化するのではなく、現実の格ゲー文化と作品世界を結びつけている点が大きな見どころです。

涼風 結人(すずかぜ ゆいと)/アニメ情報ナビゲーター

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